去年1年間の年収を、額面で、1万円の単位まで言えるでしょうか。
応募フォームの「現在の年収」の欄は、その数字を求めています。
希望年収の欄は、そのすぐ下です。
答えに詰まるのは、自分の年収を、実はきちんと数えたことがないからです。
月の手取りは覚えていても、賞与や手当まで足した1年分の額面となると、すぐには出てきません。
希望の金額を決めるのは、その数字が出てからです。
今の年収は「額面」で数える
転職の場面で「年収」と言えば、ふつうは税金や社会保険料が引かれる前の額面の合計を指します。
手取りで答えると、実際より低い数字を伝えることになります。
迷ったら「額面で〇〇万円です」と単位まで言えば、取り違えは起きません。
数え方は、給与明細を12か月分と、賞与の明細を並べるのが確実です。
各月の「総支給額」を足し、そこに賞与の総支給額を足します。
紙の明細が手元になくても、給与明細をウェブで見られる会社なら、過去の分をさかのぼって開けます。
月によって残業代が大きく違う人は、12か月の合計をそのまま使います。
1か月分を12倍すると、繁忙期の月を拾ったときに数字がふくらみます。
反対に、育児や病気で休んだ月がある人は、その月を除いた数字も横に書いておくと、話すときの材料になります。
中身を3つに分けておく
合計の数字だけでは、応募先と話すときに足りないことがあります。
同じ500万円でも、賞与が多い人と、残業代が多い人とでは、次の会社で同じ額になるかの見込みが違うからです。
そこで、合計を次の3つに分けて書いておきます。
| 分け方 | 入るもの |
|---|---|
| 毎月決まって出る分 | 基本給、役職手当や資格手当など毎月同じ額の手当 |
| 月によって変わる分 | 残業代、休日出勤の手当など |
| 賞与 | 夏と冬の賞与、決算賞与など |
通勤手当は、会社や応募先によって年収に入れるかどうかの扱いが分かれます。
入れたか入れていないかを、自分のメモに一言書いておくと、聞かれたときに困りません。
家族手当や住宅手当は、毎月決まって出ていても、応募先に同じ手当があるとは限りません。
制度ごと無い会社に移れば、その分は基本給で埋めてもらわない限り減ります。
内訳のメモでは、こうした手当に印をつけておくと、比べるときに見落としません。
ここまで分けると、「毎月決まって出る分」が、自分の年収の芯だとわかります。
残業が減る職場に移るなら、変わる分はそのまま減るかもしれません。
賞与は、会社の業績で上下するものです。
応募先の求人票の賞与の欄も、同じ目で読みます。
「賞与年2回(前年実績 計4か月分)」とあれば、それは去年の実績で、今年の約束ではありません。
何の4か月分なのか、基本給なのか、手当まで含めた月給なのかでも、金額は変わります。
書いていなければ、条件の面談で聞いてかまわない項目です。
応募先の「月給」にも中身がある
比べる相手の求人にも、同じように中身があります。
特に見ておきたいのが、固定残業代です。
職業安定法にもとづく厚生労働省の指針は、固定残業代の仕組みを採る求人では、固定残業時間と金額の計算方法、固定残業代を除いた基本給の額、固定残業時間を超えた分の割増賃金を追加で支払うこと等を明示するよう定めています。
求人票に「月給30万円(固定残業代〇時間分〇万円を含む)」とあれば、毎月決まって出る分のうち、残業代にあたる部分がそこに入っているということです。
出典: 厚生労働省「職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者…が適切に対処するための指針」第三の一の(三)ハ
今の会社で残業代を別に受け取っている人は、ここで比べ方を合わせます。
自分の「毎月決まって出る分+変わる分」と、応募先の「基本給+固定残業代」を並べると、同じ物差しになります。
ただし、固定残業代に含まれる時間と、実際に働く残業の時間は別の話です。
面接では「固定残業の〇時間に対して、この部署の残業はふだんどのくらいですか」と、想定している残業の時間を聞いておきます。
内定が出たあとに受け取る書面で、賃金の欄の読み方は内定承諾前の書面チェックの記事で書きました。
希望の金額を口にする時機
応募書類の欄に数字を書くか、「貴社規定に従います」と書くかは、人によって考えが分かれます。
欄が必須なら、今の年収と同じ額か、それに少し上乗せした額を書いておくのが無難です。
任意の欄なら空けておき、面接で聞かれたときに答える手もあります。
会社によって違いますが、金額の話が具体的になるのは、選考の後半や内定の前後に設けられる条件の面談であることが多いようです。
一次面接で聞かれたら、今の年収だけを正確に答え、希望は「仕事の範囲を伺ったうえでご相談させてください」と預けておく言い方があります。
仕事の中身がわからないうちに金額を決めると、あとで上げにくくなるからです。
転職エージェントを通している場合は、金額の交渉を担当者が間に入って進めることもあります。
その場合も、自分の手元に3つに分けた数字があると、担当者に伝える話がぶれません。
年俸制の会社に移るときは、提示額に賞与が含まれているのか、別に出るのかを確かめます。
年俸を12で割って毎月払う会社もあれば、14や16で割って一部を賞与の時期に払う会社もあります。
同じ年俸でも、月々の振込額が変わるので、家計の見通しに響きます。
伝えるときの言い方
金額を言うときは、今の年収、希望の額、その根拠の3つを1度に出します。
根拠が無いまま希望額だけを言うと、「なぜその額か」を聞き返されます。
例(面接で希望年収を聞かれたときの答え方):
現在の年収は、額面で〔〇〇〕万円です。
内訳は、月々の給与が〔〇〇〕万円、残業代が年間で〔〇〇〕万円ほど、賞与が年2回で合わせて〔〇〇〕万円です。
御社では残業が今より少なくなると伺っていますので、毎月の給与と賞与で、今と同じ〔〇〇〕万円程度を希望しております。
担当する範囲が広がる場合は、金額もあらためてご相談させてください。
「下がってもいいので入りたい」と思う会社でも、最初から下げた数字を言う必要はありません。
下限を自分の中で決めておき、相手から提示が出てから、そこを下回るかどうかで判断します。
下限は、今の「毎月決まって出る分」の12か月分を目安にすると、暮らしの見通しが立てやすくなります。
今の年収は、盛らずに伝える
希望を通したくて、今の年収を少し高めに言いたくなる人もいます。
応募先によっては、選考の後半や内定のあとに、今の会社の給与明細の写しなど、金額がわかる書類を求めることがあります。
提出を求められなくても、面接で言った数字は、そのあとの条件の話し合いの土台として残ります。
面接で言った数字と違えば、話した内容そのものの信用に響きます。
今の年収が低くて言いづらいなら、数字は正直に言い、そのあとに「今の会社では評価が給与に反映されにくい仕組みでした」と事情を1文添えます。
低い理由が仕組みの側にあると伝われば、次の会社にも、今の額に合わせなくてよいと考えてもらいやすくなります。
数字を決めたら
今の年収、3つの内訳、希望の額、下限の額。
この4つを、手帳かスマホのメモの1ページにまとめます。
応募フォームの欄にも、面接の受け答えにも、そのページから数字を写すだけになります。
今夜は、給与明細を12か月分さかのぼり、賞与の分も入れて総支給額を足すところまでで止めます。
出た合計は、メモのいちばん上の行に書いておきます。
アイキャッチのイラストはAI生成です。



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