内定を承諾して、入社日は12月1日に決まった。
その翌週、上司に退職を切り出すと、返ってきたのは「後任が来るのが1月だから、それまではいてほしい」という言葉でした。
会議室を出てから、承諾のメールに書いた「12月1日」の文字を、何度もスクロールして見返す。
入社日の延期は、内定の返事を待ってもらう相談とは重さが違います。
返事の期限は「まだ決めていない話」を待ってもらうものでした。
入社日は、承諾した時点で一度決まった約束です。
それを動かしたいと申し出る以上、相手が受けてくれるかどうかは相手しだいで、こちらにできるのは頼み方を整えることだけです。
入社日は、承諾のときに決めた約束の一部
厚生労働省のハンドブック「知って役立つ労働法」は、採用内定によって労働契約が成立したと認められる場合がある、と説明しています。
入社日は、その契約で働き始める日として決めた日付です。
内定先から見れば、その日に合わせて席を空け、研修や配属の予定を組んでいます。
だから延期の相談は、内定先の段取りを組み直してもらうお願いになります。
認めてもらえることもあれば、「その日でないと困る」と言われることもある。
どちらになるかは、会社の事情と、こちらの頼み方の両方で決まります。
承諾のときに入社日が書かれた書面をもらっているなら、手元に出しておきます。
書面の読み方は、内定承諾の前に労働条件通知書で確かめる項目が手引きになります。
出典: 厚生労働省「知って役立つ労働法~働くときに必要な基礎知識~」(当サイトで要約)
内定先に連絡する前に、今の会社と日付を詰める
上司に「1月までいてほしい」と言われて、そのまま内定先に「1月からでもいいですか」と聞くのは、順番が逆です。
今の会社の側で退職日が固まっていないと、内定先に新しい日付を出せません。
一度延ばしてもらったあとに、もう一度延ばしてもらえないかと頼むのは、最初の相談よりずっと言い出しにくくなります。
上司との話では、「いつまでなら引き継ぎが終わるか」を具体的な日付で決めます。
後任が来る日まで待つのではなく、後任が来なくても引き継ぎ書と預かる人を決めて終える日、という考え方もあります。
延ばす幅を小さくできれば、内定先への相談も通りやすくなります。
引き止められたときに日付を守る返し方は、引き止めの断り方とメール文面の記事で扱っています。
そもそも延ばす必要があるのかも、ここで一度考えます。
上司の「いてほしい」に、その場で日付を合わせて返事をしない。
就業規則の退職の条を開き、申し出から何日で辞められる決まりになっているかを確かめてから、延ばすかどうかを決めても遅くはありません。
延ばす先の日付は、1つに決めて持っていく
内定先への相談で避けたいのは、「少し遅らせていただくことは可能でしょうか」と幅を持たせた頼み方です。
受けた側は、何日遅れるのかが分からないまま社内に話を持っていけません。
「12月1日を、1月5日に変えていただけないか」のように、元の日付と新しい日付をそろえて伝えます。
新しい日付は、今の会社と決めた退職日の翌日か、そのすぐ後の切りのいい日にします。
入社日を月の初めなどにそろえている会社もあるので、内定先の担当者に「御社の入社日として都合のいい日はありますか」と添えて聞くのも手です。
延ばす幅は、引き継ぎに要る日数に合わせた最短の日付にとどめます。
連絡は人事の担当者へ、理由は短く
連絡する相手は、内定の連絡をくれた人事の担当者です。
転職エージェントを通して決まった内定なら、先にエージェントの担当者に伝え、どう切り出すかを相談します。
エージェントを通した内定では、企業との日程の調整を担当者が受け持っていることがあるためです。
理由は、今の会社の引き継ぎに時間がかかる、の一言にとどめます。
上司に引き止められた経緯や、後任が決まらない社内の事情までは、話に出さずにおきます。
今の会社の悪口に聞こえる言い方は、内定先にとって「うちを辞めるときも同じことを言うのだろうか」という心配の種になります。
例(電話で切り出す一言):
「入社日の件でご相談がありお電話しました
現在の職場で引き継ぎに想定より時間がかかることになり、12月1日の入社を、1月5日に変えていただくことはできないかとご相談したく思っております
勝手なお願いで申し訳ありません」
電話で話がまとまっても、まとまらずに「社内で確認して折り返す」と言われても、その日のうちにメールを送ります。
電話で伝えた日付を文字で残しておけば、担当者が社内で相談するときに、そのまま転送して使えます。
例(電話のあとに送るメール):
件名: 入社日についてのご相談(〔氏名〕)
〔会社名〕人事部〔担当者名〕様
本日はお電話でお時間をいただき、ありがとうございました
お話しした入社日の件を、念のためメールでもお送りいたします
現在の職場での引き継ぎに時間を要することとなり、〔12〕月〔1〕日の入社を、〔1〕月〔5〕日に変更いただけないか、ご相談できればと存じます
現在の職場とは、〔12〕月〔31〕日付で退職することで話がついております
ご迷惑をおかけし申し訳ありませんが、ご検討いただけましたら幸いです
〔氏名〕〔電話番号〕
メールの中に「今の会社とは〇日付で退職することで話がついている」と一文入れておくと、内定先は「また延びるのではないか」と心配せずに済みます。
まだ話がついていないなら、その文は書けません。
書けない段階で連絡しているなら、上の順番に戻って、今の会社との話を先に詰めます。
延ばせないと言われたとき
「研修の日程が決まっているので、12月1日でお願いしたい」と返ってくることもあります。
そのときに残る手は、今の会社の退職日を元の予定に戻せないか、もう一度上司と話すことです。
引き継ぎ書を前倒しで仕上げる、預かる人を早めに決めてもらうなど、延ばさずに終える段取りを示して相談します。
話がこじれて、内定先から入社そのものを考え直すような言い方をされた、今の会社が退職日をどうしても認めない、といったときは、一人で判断を抱え込まないほうがいい場面です。
都道府県労働局や労働基準監督署の中にある総合労働相談コーナーは、募集・採用を含むあらゆる分野の労働問題の相談を受けていて、予約は要らず、無料で使えます。
開いているのは平日だけで、土・日・祝日と年末年始(12月29日から1月3日)は閉まっています。
受付の時間は窓口ごとに違うので、厚生労働省の一覧で近くの窓口を確かめてから電話します。
出典: 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」(当サイトで要約)
延ばしてもらえたら、新しい入社日を、今の会社の退職日と同じページに書き直します。
退職日が12月31日、入社日が1月5日。
そのあいだの4日間は、どちらの会社にも属していない日になります。
この数日の健康保険と年金の扱いも、新しい日付が決まった時点で確かめておきます。
送信済みフォルダの一番上には、件名「入社日についてのご相談」。
返事は、その件名の頭に「Re:」が付いて戻ってきます。
アイキャッチのイラストはAI生成です。



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