「入社はいつごろから可能ですか」。
二次面接の終わりに聞かれて、「2か月後くらいでしょうか」と答えた。
帰りの電車で手帳を開くと、2か月後の少し手前に、冬の賞与の支給日が来ます。
就業規則で退職を何日前に申し出るのかも、まだ見ていません。
在職中の転職では、退職日を自分ひとりでは決められません。
次の会社の入社日、今の会社の決まり、引き継ぎにかかる日数、賞与。
この4つが同じカレンダーの上で引っぱり合います。
最初に置くのは、次の会社の入社日
カレンダーに最初に書き込むのは、退職日ではなく入社日です。
入社日は内定先との約束で、いったん決めると、こちらの都合だけでは動かしにくい日付だからです。
今の会社の側の日付は、そこから左へさかのぼって決めていきます。
入社日の前日を退職日にすると、会社に属していない日が1日もできません。
退職日と入社日のあいだに日が空くときの手続きは、転職のときの健康保険と年金の記事で確かめられます。
まだ内定が出ていない段階で、入社可能日を聞かれることもあります。
その場では「〇月上旬以降」のように幅で答え、この記事の手順で数えてから、内定のあとに日付を詰めます。
冒頭の「2か月後くらい」も、内定の連絡が来た時点で数え直せば間に合います。
入社日から、申し出の日までをさかのぼる
入社日が決まったら、右から左へ、次の順で日付を置きます。
・入社日の前日か、その数日前に、退職日
・退職日から、残っている有給休暇の日数をさかのぼって、最終出社日
・最終出社日から、引き継ぎにかかる日数をさかのぼって、引き継ぎの開始日
・その少し前に、上司に退職を申し出る日
有給休暇を最後にまとめて使う人は、最終出社日と退職日が数週間ずれます。
残りの日数の確かめ方は退職前に有給休暇を使い切る段取りの記事に譲り、ここでは日数を手帳に写すだけにします。
引き継ぎにかかる日数は、人によって大きく違います。
担当している取引先の数、月に1回しか来ない業務があるかどうか、後任がもう決まっているか。
自分の業務を書き出して、1つずつ「教えるのに何日か」を見積もり、最後に1週間ほど足しておきます。
引き継ぎの相手の予定が詰まっていて、思うように時間が取れないことは珍しくありません。
申し出の日は、就業規則を開いてから決める
最後に残るのが、上司に退職を申し出る日です。
ここは会社の就業規則を開き、「退職」の条を探します。
「退職を希望する日の1か月前までに申し出る」のように、日数が書かれていることがあります。
法律の側では、民法627条1項が、期間の定めのない雇用について「各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる」と定め、続けて「この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する」としています。
一方、厚生労働省のハンドブック「知って役立つ労働法」は、就業規則などに「退職する場合は退職予定日の1か月前までに申し出ること」というように定めている会社も多いとして、「退職手続きがどうなっているか調べることも必要です」と書いています。
在職中の転職では、次の会社の入社日が先に決まっています。
申し出が遅れて引き継ぎが押せば、その分だけ入社日に食い込みます。
就業規則の日数に、引き継ぎの日数と有給の日数を足すと、申し出の日は思っていたより早くなるはずです。
契約社員など期間の定めがある働き方は、ここに書いた説明とは扱いが変わるので、契約書と就業規則の両方を見ます。
出典: e-Gov法令検索「民法」第627条/厚生労働省「知って役立つ労働法~働くときに必要な基礎知識~」(当サイトで要約)
賞与の支給日は、賃金規程で条件を見てから置く
賞与の支給日が近いと、もらってから辞めたい、と考えるのは自然なことです。
ただ、賞与を誰にどう払うかは、会社ごとに決め方が違います。
就業規則か、その別冊の賃金規程(給与規程)の、賞与の条を開いて確かめます。
見る所は3つです。
支給の条件として、在籍について何か書かれているか。
どの期間の働きぶりをもとに計算するか。
支給日が「〇月〇日」と決まっているのか、「〇月中」のように幅があるのか。
読んでも分からなければ、人事や総務に「賞与の支給の条件を確認したい」とだけ聞きます。
退職を考えていることは、この段階では話さずにおきます。
支給日が、上司に退職を申し出た日よりあとに来ることもあります。
その場合は、申し出たことが賞与の査定にどう扱われるのかについても、賃金規程に書かれていることがないかを見ておきます。
条件を確かめたうえで、支給日を退職日より前に置けるかを見ます。
置けないときは、賞与をあきらめるか、入社日を後ろにずらせないか内定先に相談するかの、どちらかになります。
入社日をずらすと、次の会社での最初の給料もその分遅れます。
賞与の額と、遅れる分の給料を同じ紙に書いて比べると、迷う時間が短くなります。
並べるとこうなる
数字を入れて並べると、たとえば次のようになります。
就業規則は「1か月前までに申し出」、有給の残りは10日、引き継ぎは3週間と見積もった人の例です。
例(入社日が12月16日のとき):
12月16日 次の会社に入社
12月15日 退職日
12月10日 賞与の支給日(賃金規程で条件を確かめておく)
12月1日 最終出社日(翌日から有給休暇を10日)
11月10日 引き継ぎを始める
11月5日 上司に退職を申し出る
この例では、申し出が11月5日なので、退職日の12月15日から見て、就業規則の「1か月前」には間に合っています。
引き継ぎの3週間は、申し出の翌週の火曜から最終出社日の12月1日までに収まります。
有給の10日は、12月2日から15日までの平日を数えたものです。
賞与の支給日の12月10日は有給休暇の途中ですが、退職日より前なので、在籍の条件がある会社でもその日はまだ会社に籍があります。
休みの日の数え方は会社によって違うので、有給を数えるときは会社のカレンダーで営業日を確かめます。
申し出を11月の半ばすぎまで遅らせると、就業規則の「1か月前」に届かなくなり、引き継ぎの3週間も最終出社日をはみ出します。
そうなったら、有給の一部を残すか、入社日を動かす相談をするかを選ぶことになります。
どちらも、気持ちのいい選択ではありません。
だから申し出の日だけは、余裕のある側に寄せておきます。
上司に伝えるのは、退職日を決めてから
日付が並んだら、上司に申し出るときは、退職日をはっきり口にします。
「年内で辞めたいと考えています」より、「12月15日付で退職したいと考えています」のほうが、引き継ぎの話にすぐ移れます。
切り出すときの言葉そのものは、この記事では扱わず、日付を先に決めておくところまでにします。
引き止められたり、日付を延ばすよう頼まれたりすることもあります。
そのときも、先に並べたカレンダーを手元に置いておけば、どこまでなら動かせて、どこからは動かせないかを日付で話せます。
入社日がまだ決まっていなくても、先に埋められる数字が1つあります。
次は、就業規則の退職の条に書かれた日数を、手帳の余白に書き写す番です。
アイキャッチのイラストはAI生成です。



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