研修費を返せと言われそうで、退職を言い出せないとき。書類で探す一文と、聞き方

研修費を返せと言われそうで、退職を言い出せないとき。書類で探す一文と、聞き方 退職を言い出せない

資格の受験料や外部の研修費を会社に出してもらっていると、辞めると言った途端に「全部返して」と言われる場面が頭に浮かびます。
返す話になるかを考える出発点は、その場で言われる言葉ではなく、入社や研修の前に署名した書類に何が書いてあるかです。
言い出す前にやるのは、その書類を手元に集めて、返すことに触れた一文を探すことです。

眠れない、朝に体が動かないといった状態が続いているなら、書類を探すより先に、医療機関を受診してください。

探す書類と、探す言葉

研修や資格の費用のことは、1枚の書類にまとまっているとは限りません。
入社のときの書類と、研修を受ける前に出した書類の両方を見ます。

雇用契約書・労働条件通知書 → 契約期間の欄と、研修や費用に触れた特約
就業規則と、研修・資格取得の規程 → 費用の負担や返還の条
研修や受験の前に出した誓約書・同意書・申込書 → 「〇年以内に退職した場合」のような一文
会社からお金を借りた契約書 → 返す額、返す時期、退職したときの扱い

探す言葉は「返還」「返納」「償還」「貸与」「退職した場合」です。
見つけたら、その条の文言をそのまま書き写し、書類の名前と署名した日も控えます。
あわせて、研修や資格の名前と受けた日、費用の額、払ったのが会社か自分か(会社が研修先へ直接払ったのか、自分が立て替えてあとで会社から受け取ったのか)を書き出します。
人事に写しを頼むと理由を聞かれそうなら、入社のときのメールの添付や、社内の規程の置き場を先に探します。

労働基準法16条に書いてあること

労働基準法16条は「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と定めています。
労働契約を守らなかったときに払うお金(違約金や賠償の額)を、前もって決めておく契約を禁じた条です。
ただ、研修や資格の費用を返す取り決めがどれもこの条に当たる、とは条文には書かれていません。
自分の取り決めがこの条に当たるかどうかは、書き写した一文と、研修の日付・金額のメモを見せて、後半に書く相談先で聞くのが確かです。

辞めるときの給料から研修費を引いておく、と言われることを心配しているなら、同じ法律の24条も見ておきます。
24条1項は、賃金は全額を払うのが原則だと定めています。
一部を差し引けるのは、法令に別段の定めがある場合か、その職場の労働者の過半数でつくる労働組合(無ければ労働者の過半数を代表する人)と会社が書面で協定を結んでいる場合です。
24条は賃金の払い方の決まりで、研修費を返す義務があるかどうかまでは定めていないので、協定があるかどうかと返す義務があるかどうかは、分けて確かめます。
最後の給与明細に見覚えのない差し引きがあれば、明細を捨てずに取っておき、相談先で聞きます。

お金の話が残っていても、辞める申し入れは出せる

雇用契約書の契約期間の欄が「期間の定めなし」なら、民法627条1項の「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる」が当たり、雇用は申し入れから2週間で終わります。
会社の承諾は要りません。
2週間は、申し入れを送った日ではなく、会社に届いた時から数え(民法97条1項)、初日は原則として数えません(民法140条)。
就業規則に「1か月前までに申し出る」のような決まりがあるなら、引き継ぎの日数も考えて、その日程で言えるかも見ておきます。
627条の条文には、会社に出してもらった費用を返し終えることを、申し入れの条件にする文言はありません。
返すかどうかの話は、辞める申し入れとは分けて、書類を見ながら確かめていきます。

「〇年〇月〇日まで」と契約期間が決まっているなら、扱いが変わります。
期間の途中で辞めるには、会社との合意か、民法628条の「やむを得ない事由」が要ります。
その事由が一方の過失で生じたときは、相手に損害賠償の責任を負うことも、同じ条に書かれています。
契約期間が1年を超える契約なら、労働基準法137条により、期間の初日から1年を過ぎたあとは、会社に申し出ていつでも辞められます。
ただし、一定の事業の完了に必要な期間を定めた契約、厚生労働大臣の基準に当たる高度の専門的知識等を持つ人がそれを必要とする業務に就く契約、満60歳以上の人の契約は除かれます(労働基準法137条と14条1項)。
期間の決まった契約の人は、研修費の一文とあわせて、途中で辞めるときの扱いも相談先で聞きます。

出典: e-Gov法令検索「労働基準法」第14条・第16条・第24条・第137条/e-Gov法令検索「民法」第97条・第140条・第627条・第628条(当サイトで要約)

上司への一言に、お金の話を混ぜない

最初の一言は、辞めることと、退職日の希望だけにします。
「辞めようか迷っている」ではなく、辞めると決めたことをはっきり言います。
「研修費はどうなりますか」と自分から添えると、その場がお金の話になり、退職日の話が後回しになることがあります。
最初の一言の組み立ては、上司に退職を切り出す最初の一言にまとめました。

上司から研修費のことを言われたら、その場では額を決めず、書面で確かめたいと伝えます。

「返す決まりがあるなら、どの書類のどの条か、写しをいただけますか」
「金額と内訳を書いたものをいただければ、確かめてからお返事します」
「退職日のことは、それとは別に相談させてください」

その場で新しい誓約書や念書、給料からの差し引きに同意する書類を出されても、署名はせずに持ち帰り、読んでから決めます。
言われた言葉と日時は、その日のうちにメモに残します。
向かい合って話すこと自体がつらいなら、上司と1対1で話さずに伝える段取りもあります。
額を争う、請求をやめてほしいと会社に求めるところまで要るなら、弁護士に相談する道もあります。

自分の場合を聞くなら、総合労働相談コーナー

見つけた一文が16条に触れるのか、給料からの差し引きが24条に合っているのかは、総合労働相談コーナーで聞けます。
厚生労働省の案内では、各都道府県の労働局や全国の労働基準監督署内などに置かれていて、専門の相談員が面談か電話で応じます。
予約は要らず、無料です。
土日・祝日と年末年始(12月29日から1月3日)は閉まっています。
法律に違反している疑いがあるときは、労働基準監督署などの担当の部署に取り次ぐ、とも書かれています。
退職の連絡を代わりにしてくれる窓口ではないので、電話でも面談でも、次のメモを手元に置いてから話します。

書き写した一文と、書類の名前、署名した日
研修や資格の名前、受けた日、費用の額と、払ったのが誰か
雇用契約書の契約期間の欄に書いてあること
もう言われたことがあれば、その言葉と日時

出典: 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」(当サイトで要約)

どの書類にも、返すことが書かれていなかったら

探した書類のどこにも返すことに触れた一文が無ければ、メモのいちばん上に「書面では見つからない」と書き、その下に探した書類の名前を並べておきます。
口で約束したかどうかがはっきりしないなら、それも相談のときに伝えます。
上司に話す日の決め方は、時機を待たずに言う日を決める段取りの記事にあります。

書類の名前を並べたメモは、相談に行く日も上司と話す日も、かばんの同じポケットに入れておきます。

アイキャッチのイラストはAI生成です。

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