お世話になった上司に申し訳なくて言い出せないなら、言わずに延ばすほど、その上司に返せるものが減っていきます。
早く知れば、上司は人の手当てや仕事の割り振りを考える時間が取れます。
人づてではなく本人から聞けば、裏切られたとは受け取りにくくなります。
今日やるのは、その上司に助けてもらったことを3つ紙に書くことと、就業規則の退職の条を開くことです。
言う日をカレンダーで決める手順は、退職をなかなか言い出せないときに書きました。
「申し訳ない」を3つに分ける
申し訳なさは、たいてい3つが混ざっています。
がっかりさせること、仕事を増やすこと、裏切りに見えることです。
3つはそれぞれ、やることが違います。
がっかりさせる → 最初の一言に、具体的なお礼を1行入れる
仕事を増やす → 引き継ぎの一覧を作り、退職日までの段取りを自分から出す
裏切りに見える → 同僚や取引先より先に、その上司に直接言う
がっかりさせること自体は、どう言っても消せません。
消せないものを消そうとして、言う日が延びていきます。
自分の手で減らせる2つ(引き継ぎの手間と、人づての伝わり方)に手を付けるほうが、上司のためになります。
人の補充は会社の側の仕事で、そこまで背負わなくて構いません。
引き継ぎの一覧の作り方は、後任が決まらないまま辞めるときの引き継ぎ書にまとめました。
恩のある人ほど、「相談」の形で持ち込まない
仲のよい上司には、「辞めようか迷っていて」と相談の形で切り出したくなります。
迷っているのが本当なら、それで構いません。
ただ、辞めると決めているのに相談の形にすると、上司は止める側に回ります。
面倒を見てきた部下なら、なおさらです。
決めたのなら、退職日を入れて言い切ります。
言い方で、あとから取り消せるかどうかも変わります。
合意退職の申し込み(「辞めさせてください」と頼む形)と、「〇日で辞めます」と一方的に伝える申し入れとでは、あとから取り消せるかどうかの扱いが分かれることがあります。
どちらに当たるかは、文面や前後のやりとりで判断されます。
情に押されて言い直すつもりなら、言う前に決め切っておきます。
契約期間の定めが無い働き方なら、民法627条により、申し入れから原則2週間で辞められます。
厚生労働省のモデル就業規則の解説も、期間の定めのない雇用では、会社の承認がなくても、原則として14日を経過したときは退職となる、としています。
それでも、就業規則に「1か月前まで」などとあれば、そこに合わせて日程を相談するほうが、引き継ぎの時間も取れます。
契約期間が決まっている人の時期の考え方は、人が足りない職場で、退職を言い出せないときに書きました。
出典: 厚生労働省「モデル就業規則」第52条と解説/e-Gov法令検索「民法」第627条(当サイトで要約)
最初の一言に、お礼を1行だけ入れる
紙に書いた3つから、1つだけ選んで最初の一言に入れます。
「いろいろお世話になりました」より、何を助けてもらったかが分かる1行のほうが、相手に届きます。
長いお礼は、最後の日に取っておきます。
架空の例(設計事務所の事務、入社のときに面接してくれた課長に):
「お時間ありがとうございます。
一身上の都合で、12月25日をもって退職します。
入社した年に、見積もりの数字を間違えたとき、先方に一緒に謝りに行ってくださったことは今も覚えています。
引き継ぎの一覧は今週中にお渡しします」
契約期間の定めが無い働き方で、自分の都合で辞めるなら、理由はふつう「一身上の都合」で伝えます。
契約期間の途中で「やむを得ない事由」を理由に辞めるときは扱いが別なので、人が足りない職場の記事の契約の節を見てください。
本当の理由を言いにくいときの伝え方は、退職理由の嘘に罪悪感があるときに書きました。
上司の返事ごとの返し方
恩のある上司ほど、返事に気持ちが乗ります。
どの返事でも、最後は日付と引き継ぎの話に戻します。
- 「残念だな」と言われた →「すみません、それまでの段取りは私から出します」
- 「ここまで育ててきたのに」と言われた →「育てていただいたので、次でもやっていけると思えました」
- 「考え直してくれないか」と言われた →「考えて決めました、〇日までの引き継ぎの相談をさせてください」
- 黙り込まれた → 少し待ってから「今日はお伝えだけで、日程はあらためてご相談させてください」
何度も考え直すよう言われるときの返し方は、退職の引き止めの断り方にまとめました。
上司と2人で向き合うこと自体がつらいなら、1対1で話さずに伝える段取りもあります。
「誰より先に」を崩さない段取り
辞めることそのものより、ほかの人の口から先に聞いたことのほうがこたえる、という上司もいます。
同じ部署の仲のよい人に「実は」と話すと、その日のうちに広まることがあります。
転職先の内定が出ていても、上司に言う前の日までは、社内のだれにも話しません。
有給休暇の残りの相談や、私物の持ち帰りを始めるのも、上司に伝えたあとにします。
上司のさらに上の人(部長や店長)に先に話すのも、順番の飛ばしに見えます。
直属の上司がふだんから話しにくい相手で、その上の人のほうが話せるなら、その場合は別です。
そのときは、上の人に「〇〇課長にはこのあと私から伝えます」と添えます。
転職先を聞かれたら、と、日程で返せる恩
伝えたあと、「次はどこに行くの」と聞かれることがあります。
言える段階でなければ、「今はまだ控えさせてください」と返して、日程の話に戻します。
同業に移るなら、伝える前に、入社のときに書いた誓約書や就業規則に、同業への転職や秘密の扱いの決まりが無いかを見ておきます。
決まりがあって迷うなら、総合労働相談コーナーなどで先に聞きます。
日程の相談では、上司の都合を1つだけ聞きます。
「年末の締めと3月の決算のうち、どちらにいたほうが助かりますか」のように、2つから選んでもらう形です。
選べる余地があるなら、そこに合わせるのが、いちばん分かりやすい恩の返し方になります。
ただし、入社日が決まっている転職先との約束は崩しません。
合わせられない理由は、「入社日が決まっているので」とそのまま伝えます。
恩は、辞めるまでの日々でも返せる
言ったあとの数週間のほうが、上司にとっては大事です。
気まずさから口数が減り、引き継ぎの質問にも短くしか答えなくなる人がいますが、それでは上司の手間が増えるだけです。
いつもどおりの時間に来て、いつもどおり報告します。
引き継ぎの一覧を約束の日に渡し、自分の担当の取引先には、上司と相談した順番で知らせます。
最後の日の挨拶で、紙に書いた残りの2つを伝えます。
挨拶のメールの文例は、最終出社日の挨拶に置きました。
今日と今週にやること
今日:
- その上司に助けてもらったことを、紙に3つ書く
- 就業規則の退職の条(何日前までに申し出るか)を見る
- 雇用契約書で、契約期間の定めがあるかどうかを見る
今週中:
- 辞めると決めた → 同僚に話す前に、上司に10分もらい、退職日とお礼の1行を伝える
- まだ迷っている → 相談として話すか、決めてから話すかを先に選ぶ
- 言ったあと → 約束した日に引き継ぎの一覧を渡す
紙の3つのうち、いちばん上に書いたものから最初の一言を作ってください。
アイキャッチのイラストはAI生成です。



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